根本から理解!シーア派とスンニ派の違いとは? 〜イスラム教の宗派の違いとは?わかりやすく解説!〜
「スンニ派」と「シーア派」。
これはイスラム教の宗派を表す言葉です。
日本にはイスラム教徒はほとんどいませんが、この2つの言葉を聞いたことがない人はほとんどいないんじゃないでしょうか。
ということで、今回はこのスンニ派とシーア派の違いを、根本からわかりやすく解説します!
「イスラム教ってなんやねーん!」という方は、以前のこちらの記事からどうぞ!
ということで、それでは早速、レッツビギン!
目次
スンニ派とシーア派の概要
イスラム教の宗派は大きく分けると、
- スンニ派:約85%
- シーア派:約15%
にわかれます。
他の宗派もありますが、めちゃくちゃ少数派なので数字には入れてませんし、ニュースで出てくることはほとんど無いので、「ムスリムのほとんどはスンニ派で、シーア派はめっちゃ少ない」と覚えていれば問題ないです!
なぜ宗派がわかれたの?
まずはスンニ派とシーア派が分かれるきっかけとなった、歴史的背景を見ていきましょう!
イスラム教のリーダーは誰?
当たり前ですが、イスラム教が出来た直後はスンニ派とシーア派のような宗派の違いなんてありませんでした。
それがスンニ派とシーア派に分裂したきっかけとなったのが「イスラム教のリーダー」をめぐる対立です。
イスラム教はムハンマドさんが創設し、信者たちをまとめていったのですが、問題は彼が死んだ後でした。
彼の死後、イスラム教の新しいリーダーを決めるときに、
- 信者が選んだふさわしい人がなるべきだ!
- やっぱムハンマドさんと血の繋がってる人がなるべきでしょ!
という意見に別れちゃいます。
そこで、血の繋がっている従兄弟のアリーさんと、血の繋がっていないアブーさんが候補者に選ばれますが、「まあ血が繋がってなくてもよくね?アリーは若いし、まだリーダは無理でしょ!」という感じで、ムハンマドとスーパー仲が良かったアブーさんがリーダーになります。
この、ムハンマド死後のイスラム教のリーダーを「カリフ」と呼びます。アブーさんは初代カリフ。
ちなみにこのアブーさん、ムハンマドを尊敬しすぎて、ムハンマド56歳、アブー53歳のときに9歳の娘をムハンマドの嫁にやる、という現代では想像もつかないことをやっちゃってます。
なんで、一応アブーさんは、ムハンマドさんの「義理のお父さん」です。年下ですが。
で、その後ウマルさん(2代目)、ウスマーンさん(3代目)に次いで、やっとムハンマドの従兄弟のアリーさんが4代目のカリフとなります。
でも、やっとのことでカリフになったアリーさんも、先代カリフのウスマーンさんの又従姉妹・ムアーウィアさんという人と対立し、カリフの座についてたった6年でなんだかんだで殺されちゃいます。
その後、ムアーウィアさんはウマイア朝という王朝を開き、ここからイスラム王朝の黄金時代が始まります。
一方のアリーさん支持派は、アリーさんの息子・ハサンさんをリーダーに立て、一旦ムアーウィアさんとは仲直りしますが、ハサンとムアーウィアの死後、アリーさん支持派がウマイア朝に対して反乱を起こします。
しかし、数で絶対的に劣るアリーさん支持派の反乱はウマイア朝に沈められ、ここからアリーさん支持派はウマイア朝から決別することとなります。
その後「ウマイア朝派」の人たちがスンニ派、ウマイア朝から決別した「アリーさん支持派」の人たちがシーア派となるのです!
とまあ、こんな感じでスンニ派とシーア派に分かれていったのですが、簡単に言うと、
- 血筋を大事にするのが「シーア派」
- 血筋よりも、最もふさわしい人がリーダーになるべきだ!と考えるのが「スンニ派」
という感じです!
「スンニ」と「シーア」とは?
「スンニ」とはアラビア語で「スンナに従う人」で、「スンナ」とは「慣行」や「習慣」みたいな意味です。
血筋よりもムハンマドが教えた「慣行」を大事にする、ということで「スンニ派」と呼ばれます。
一方の「シーア」とは「党派」や「派閥」みたいな意味です。まだスンニ派やシーア派などの概念がないときは、アリーさんの支持者は「アリーのシーア(アリー派)」と呼ばれてました。
なので、そこから「シーア派」と呼ばれるようになってます!
スンニ派の広がり
上記のように、ウマイア朝は後にスンニ派と呼ばれる派閥の王朝です。
で、このウマイア朝、建国から着々と領土を広めて行き、最盛期には東のアフガニスタンから、西はポルトガルまで支配することになりました。(下の画像の色付き全部)
なので、現在でもスンニ派は世界各国に広がる、多数派の宗派となってます。
シーア派の広がり
一方のシーア派は、人数も少なかったことにより、全然広まりませんでした。
一時期(900-1200年頃)ファーティマ朝というシーア派王朝がエジプトを中心に力を持つものの、結局はスンニ派に倒され、世界に浸透することはありませんでした。
しかし、シーア派にとっての転機が訪れます。それが、イランでのサファーヴィー王朝の建国です。(1501年)
このサファーヴィー朝はシーア派の王朝だったので、これ以来イランにシーア派が根付くことになります。
現代のスンニ派とシーア派分布図
それでは、現在の世界のスンニ派とシーア派の分布はどんな感じなのでしょうか?
スンニ派とシーア派の割合
スンニ派とシーア派の割合ですが、大体で「スンニ派85%・シーア派15%」くらいと言われています。
もちろんスンニ派とシーア派以外の宗派もありますが、めっちゃ少ないです。
なので、上でも一度言ったように「イスラム教徒はほとんどスンニ派で、シーア派はめっちゃ少ない」と覚えていたらオッケーです!
分布図
スンニ派とシーア派の分布図はこんな感じ!
※出典:WAIT BUT WHY
上の図の青い部分がスンニ派で、緑がシーア派です。
見てのとおり、殆どがスンニ派です。
シーア派の国
では、シーア派の国はどこがあるのでしょうか?
まずはこちらをご覧ください!
国内ムスリム(イスラム教徒)のうち、シーア派のパーセンテージを表した図です!
※出典:Global Times
【過半数の国】
- イラン
- イラク
- アゼルバイジャン
- レバノン
- バーレーン
【そこそこ多い国】
- イエメン
- クウェート
- シリア
って感じですね!
ただ、シーア派人口が過半数を越している国でも、政治面を見てみると、
- アゼルバイジャン:政治に宗教を持ち込まない。
- レバノン:キリスト教徒と権力分散
- バーレーン:政府は少数派のスンニ派
としているので、政治的にもシーア色が強い国は「イランとイラクのみ」です。
例外的な国、シリア
シリアの政治はイスラム教でもちょっと特殊です。
シリアでは、アサド大統領はじめ「アラウィー派」という宗派の人が政府高官に多くいます。
このアラウィー派、内容的にシーア派イスラムやキリスト教、シリアの土着宗教なんかが色々混ざったもので、そもそもイスラム教かも怪しまれる宗教でした。なので、スンニ派などからは昔から迫害され続けていました。
しかし、今のアサド大統領のお父さんの父アサド(ハーフィズ・アサド)が大統領になる際、「なんかアラウィー派って、イスラムって認められてる?微妙やんな?それってちょっと都合悪いよね!」ということで、シーア派の偉いさんに「アラウィー派を、シーア派イスラムと認めてくれ!」とお願いしたんですね。
そもそもシリアの憲法に「シリアの大統領は、イスラム教徒であること」とも書かれているので、この辺りの関係もあったんじゃないか、とも言われてます、
で、まあそこから、「アラウィー派はシーア派の一部」と考えられるようになりました。
なので、昔から「アラウィー派はシーア派の一部だった」わけじゃないんです。
スンニ派とシーア派の違い
では、どのような部分が宗派で異なってくるのでしょうか?
大きな違いを何個かピックアップしましょう!
信仰対象が微妙に違う
スンニ派とシーア派は両方れっきとしたイスラム教なので、アッラーとその言葉が書かれたクルアーンを信仰します。
しかし、シーア派には上記以外でも「人間のリーダー」を崇拝する傾向があります。
例えば、「イマーム」と呼ばれるシーア派のリーダー的存在の人のお墓が聖地となり、信者は定期的に巡礼します。
また、偶像崇拝を徹底的に禁止しているスンニ派とは異なり、シーア派のイランなんかでは、現代のイスラム教指導者(ハメネイさん)とその先代(ホメイニーさん)の写真が町中に飾られており、それをある種の崇拝対象としています。
カリフを認めない
上で書いたように、ムハンマドの死後、
- アブー(初代)
- ウマル(2代目)
- ウスマーン(3代目)
- アリー(4代目)
の順でカリフ(イスラム教のリーダー)に就きましたが、ムハンマドの従兄弟のアリーさんを支持するシーア派は、アブー・ウマル・ウスマーンをリーダーとして認めていません。
シーア派ではイスラム教のリーダーはカリフではなくイマームと呼び、アリーさんこそが初代イマームとしています。
このイマーム、アリーを含め5人だったり7人だったり12人だったりと、どこまで続いたかはシーア派内の宗派で異なってたりします。
現在最もポピュラーなのは「12イマーム派」です。
ちなみにスンニ派で「イマーム」というと「モスクで説教を行う司祭」を指すので、めちゃくちゃいっぱいいることになります。
礼拝スタイルが違う
スンニ派は1日5回お祈りするのに対し、シーア派は1日3回としています。
また、お祈りの作法も微妙に異なったりします。
まあ、お祈りをしない僕らにとってはほとんど関係ないですね。
以上のような違いは、シーア派とスンニ派では見られます。
ただ、正直言って別にスンニとシーアの分裂のきっかけや、信仰対象の違いを知ったところで、ニュースの理解度が深まるわけではありません。
ただ、
- 世界中のほとんどのムスリムはスンニ派。
- シーア派の国はイランとイラクだけ。
- シリアの政権を握っているアラウィー派は、一応シーア派の一派。
だけは覚えておくと、後々ニュースを見る際に便利です!
「これだけ長いの読まされて、それだけかよ!」っとツッコミを入れたくなる気持ちもあるかとは思いますが、僕の笑顔に免じて許してください!(キラーン!)
ということで、次回は「スンニ派とシーア派って、仲が悪いの?」という点についてみていきましょう!
それでは、また次回お会いしましょう!チャオ!