「石油」から世界を見る! 〜原油埋蔵量・輸出額ランキングから、世界を読め!〜
私たちの生活に無くてはならない資源である、石油。
近年では再生可能エネルギーや原発などが何かと話題になっていますが、現在でも石油はエネルギーとして最も使われてる資源のひとつです。
そんな石油ですが「オイルマネー」という言葉があるように、産出国には莫大な利益をもたらします。
言っちゃえば、国民が全然働かなくとも、産業なんて全然発達しなくとも、原油さえ採れれば国が成り立っちゃうのです。
死にもの狂いでサラリーマンが働くことにより発達した日本から見ると、羨ましい限りですね!
でも、単純に「原油をたくさん採れる国=リッチな国」というわけでもないのも事実です!
ということで、今回はそのあたりの話を、
- 原油埋蔵量ランキング
- 原油輸出額ランキング
- 世界情勢
を絡めながら見ていきましょう!
原油を精製して石油を作ります。でも、一般的に「石油=原油」と思っていても差し支えはありません。
目次
石油埋蔵量ランキング!
石油=アラブ?
みなさん、石油といえばどこで採れるイメージですが?
おそらく、多くの人は「中東」と答えると思います。
いわゆる「アラブの王様」みたいなイメージですね!
近年は特に「ヨーロッパで豪遊するアラブのスーパーリッチピーポー」なんかがよくニュースで取り上げられてたりします。
彼らの(と一括りにするのはよくないですが)自己顕示欲は半端ないので、わざわざ自国からヨーロッパまで船で愛車を持っていき、ショッピングなんかを楽しんだりするそうです。
そんな彼らのスーパーカーは、ヨーロッパの街では人気者!
という感じで「石油といえばアラブ!」というイメージがありますが、実際のところ「世界で最も石油が採れる国」は、アラブの国・中東の国ではないのです。
ということで、ランキングがこちら!
ばばん!
原油埋蔵量ランキング!
※ソース:BP Statistical Review ofWorld Energy June 2016
国 | 埋蔵量(億バレル) | |
---|---|---|
1 | ベネズエラ | 3009 |
2 | サウジアラビア | 2666 |
3 | カナダ | 1722 |
4 | イラン | 1578 |
5 | イラク | 1431 |
6 | ロシア | 1024 |
7 | クウェート | 1015 |
8 | UAE | 978 |
9 | アメリカ | 550 |
10 | リビア | 484 |
とまあこんな感じです。
結構意外じゃないでしょうか?
一位はベネズエラです。
「どこやねん!」ってツッコミたくなりますよね。ベネズエラは南米の国です。
トップ10をエリア別で分けると、
【中東】
- 2:サウジアラビア
- 4:イラン
- 5:イラク
- 7:クウェート
- 8:UAE
【北米】
- 3:カナダ
- 9:アメリカ
【南米】
- 1:ベネズエラ
【ヨーロッパ】
- 6:ロシア
【アフリカ】
- 10:リビア
なので、まあやはり中東メインにはなりますが、1位は南米のベネズエラです。
ベネズエラの経済は崩壊状態
では、1位のベネズエラは、石油の恩恵を受けているリッチな国なんでしょうか?
実はこのベネズエラ、2017年現在では「世界で最も経済がやばい国」のうちの一つにもあげらるほど、経済が崩壊している国です。
一時期、スーパーの棚から商品がなくなるほどです。
なぜ、世界中が必要とする石油がたくさん採れるのに、経済が崩壊しているのでしょうか?
それは、ベネズエラが「石油に頼りすぎていたから」です。
石油なんて、世界中の国が欲しがるものなので、売れなくなることなんてありません。
なので、原油産出国なんて言っちゃえば「原油を売ってさえすれば国は成り立つ」のです。その証拠に、ベネズエラの2014年の輸出金額のうち、95%は原油でした。
しかし、石油というものは、頻繁に値段が変わるものです。
例えば、2014年7月は1バレル(約160L)100ドルだったのが、1年後の2015年7月には50ドルになっちゃいました。
ということは、単純に考えて石油の売り上げは半減します。ベネズエラ政府の収入もダダ下がりしました。
そのせいで、ベネズエラでは市場で回るお金が少なくなり、物価が高く(インフレ)なっちゃいます。
しかもこのインフレが、ただのインフレじゃなくハイパーインフレ。2016年のインフレ率は500%と言われています。
1年で物価が5倍になるんです。
いくら原油がたくさん取れようとも、それに頼りすぎてちゃダメなのです。
なにごとも、バランスですよね。
インフレのについては、姉妹サイト「セイジー!」のこちらの記事で解説しています!
原油輸出額ランキング!
石油関連でもうひとつ注目すべきランキングが、この「原油輸出額ランキング」です。
いくらいっぱい原油が採れるからと言って、それをたくさん採れる技術があり、その上で買ってくれるお客さん(国)がいないと、石油でお金儲けできないですからね!
ということで、このランキングがこちら!
※ソース:World Factbook(CIA) 2015
国 | 輸出額(百万ドル) | |
---|---|---|
1 | サウジアラビア | 133.3 |
2 | ロシア | 86.2 |
3 | イラク | 52.2 |
4 | UAE | 51.2 |
5 | カナダ | 50.2 |
6 | ナイジェリア | 38 |
7 | クウェート | 34.1 |
8 | アンゴラ | 32.6 |
9 | ベネズエラ | 27.8 |
10 | カザフスタン | 26.2 |
という感じです!
これ、埋蔵量と比較すると結構違うんですね。
例えば、埋蔵量4位のイランは、トップ10に入っていません。
埋蔵量1位のベネズエラでさえ、輸出額では9位です。
比較するとこんな感じ!
こう見ると、
- サウジ・ロシア・UAEは、埋蔵量から考えて効率よく原油を売っている。
- ベネズエラ・イラン・アメリカ・リビアは全然売れていない。
のがわかりますよね。
この事実は何を意味しているのでしょうか?
世界情勢に絡めて考えていきましょう!
原油を効率よく売れている国
サウジアラビア
サウジアラビアは世界で最も原油を売っている国です。
上の図から見ても、効率よく原油を売っているのがわかります。
なぜサウジがこんなにも原油を売ることができるのでしょうか?
それには「アメリカの力」が多いに関係しています。
サウジアラビアの油田が発見されたのは、1930年頃です。この頃は世界中で「車はお金持ちの物ではなく、一般大衆の物」になりつつあったころです。
そう、車の需要が増えるにつれて、もちろんそのエネルギーのもととなる石油の需要も上がって行きました。
そこで、原油が多く眠るであろう中東に目をつけたのがアメリカです。
1930年頃のサウジアラビアなんて、砂漠しかないような国です。そんな国に、油田を大々的に掘る資金なんてありません。
そこで、アメリカの企業がサウジアラビアから油田開発の利権を買い取り、大々的に油田開発が行われます。
結果、それが大当たり。
第二次世界対戦後には、プラスチックチックや化学繊維などのいわゆる「石油製品」の生産も多くなり、石油の需要も上がってウナギ登りになります。
その「石油需要の拡大」に合わせ、サウジの油田開発も大々的に行われていき、今や世界中(特に日本を含むアジア)に原油を輸出する大国となってます。
ロシア
ロシアの原油の大量輸出を可能にしているのは、単純に「ヨーロッパからの近さ」です。
冷戦時代、ソ連東部(今の東ヨーロッパ)に原油を運ぶためのパイプラインが作られました。ドルジバパイプラインってやつですね!
パイプラインを組んじゃえば、いちいち船で運ぶ必要がありません。
これを通じて、東欧諸国はもちろん、ドイツなんかにも大量に原油を届けているのです。
UAE
UAE(アラブ首長国連邦)はドバイなどの7つの小国から成る国です。
UAEと言えば「お金持ちの国、ドバイ!」で有名ですが、現在のドバイはほとんど石油は採れません。お隣のアブダビはめっちゃ採れます。
UAEは、地理的にも海をでたら直ぐアジアなので、日本を含めアジアの国に多く輸出をしています。
原油を効率よく売れていない国
ベネズエラ
原油埋蔵量1位にも関わらず、全然原油を他国に売れていないベネズエラ。
なぜベネズエラはこんなにも「宝の持ち腐れ状態」が続いているのでしょうか?
その一つが、地理的要因です。
ベネズエラは、長年アメリカに対して原油を多く輸出してきました。
しかし、近年アメリカへの輸出額は下がる一方です。
その理由がいわゆる「シェールガス」ってやつですね。
シェールガスとは簡単に言うと「めっちゃ採りにくいとこにあるガス」です。採りにくい場所にあるので、いままではあんまり採れませんでした。そのままですね。笑
でも、ここ数年の技術力の向上で、このシェールガスがアメリカで結構採れるようになり、ベネズエラから石油を輸出する必要がなくなったのです。
その上、トランプさんは「国内の資源開発にめっちゃ力を入れる」と大々的に宣言してるので、ベネズエラは超ピンチです。
ブラジルなどの他の南米の国に輸出しようとも、他の国もそれなりに資源が取れちゃってるので、あまり必要とされてません。
で、ここ数年は中国にめちゃくちゃ営業活動してますが、いかんせんベネズエラは中国から遠い。輸送コストも結構かさんじゃうので、それを果たして経済崩壊状態のベネズエラがクリアできるのでしょうか?
原油があっても売ることができないベネズエラ、この先どうなるのでしょうか?
イラン
イランも、原油埋蔵量が4位にも関わらず、輸出額は12位と悲惨なものです。
その理由は「イランが欧米に嫌われているから」です。欧米の先進国が、イランからの原油を買ってくれないのです。
このイラン、1979年にイラン革命により「アメリカなんて大っ嫌いだぜ!」という国になり、それ以降欧米諸国と距離を置くようになりました。
加えて、2000年頃から「イランが核兵器を作ってるんじゃないか」という疑惑が生まれました。
というのも世界には、「アメリカ・ロシア・中国・フランス・イギリス以外は核兵器を作っちゃいけない」というなんとも理不尽(笑)なルールがあるので、イランは核兵器を作れません。
だもんで、そんな悪いことをするイランには、欧米各国は「お前のとこの原油なんて輸入しねーよ!バーカ!」という経済制裁を下しました。
これにより、イランは欧米諸国に石油を売ることができず、宝の持ち腐れ状態が続いていました。
しかーし!2015年にはイランが「核兵器作らないんで、経済制裁といてください!」といういわゆる「核合意」を欧米諸国と結んだため、今後のイランの原油輸出量は伸びていくと思われます!
アメリカ
アメリカの埋蔵量は9位ですが、輸出量は22位のため、あんまり原油を売れていない国になります。
でも、アメリカは別に原油を売らなくてもよいのです。
原油の代わりに売るものなんていっぱいあるので。
ということで、アメリカは「原油が売れない」のではなく「原油を売る必要がない」のですね。
リビア
リビアも埋蔵量は10位ですが、輸出額は24位と散々なものです。
しかしこのリビア、2011年に42年間続いたカダフィ政権が倒れるまでは、原油のおかげで経済はそれなりに安定的に発展しました。(国民の自由などは別問題です。)
でも、カダフィ政権の崩壊後、内戦やらISなんかのイスラム過激派の台頭やらで国内は大混乱に陥り、原油の生産もままならない状態になりました。
その結果、原油はあれど生産できないという宝の持ち腐れ状態に陥っちゃいました。
カダフィ大佐が良い人か悪い人かは置いといて、独裁政権が倒れることによって経済が混乱してしまった感じですね。
というように、単純に「原油が採れる=お金持ちになれる」とは限らないのですね。
逆に、ベネズエラのように原油が足かせとなって経済崩壊なんて例もあるくらいです。
日本はほとんど資源が採れません。
なので、資源が多く採れる国がすごく羨ましく感じることもあります。
しかし、逆に言えば「日本は資源が採れないからこそ、人が技術を身につけ、企業がそれを世界に発信していくことで経済大国になった」のです。
言えば「中東の国は、原油が支えている」のに対し、「日本はサラリーマンが支えている」のではないでしょうか!
ということで、今回はこの言葉で終わりましょう!
ビバ!サラリーマン!オーイエー!
チャオ!